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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第3章 交錯する想い




零は天に寄りかかりながら、天の肩からなんとか顔をあげる。
そこには、泣き叫びながら土下座する梢を、返り血を浴びた百が見下ろしていた。


『百……?』


目の前の光景に、零はただただ言葉を失った。

地面でうずくまっている男たち。土下座をする梢。おしぼりで返り血をごしごしと拭いている百。何もかもが異常で、悪い夢でも見ているんじゃないか、と。


「あのさ、キミの土下座なんてなんの価値もないんだよね。……何もなかったからよかったものの、零に何かあったらどうしてくれるの?」


百の言葉に、梢は言葉にならない声で謝り続けている。
そこにいつもの優しい百はいない。


『……百っ……もう、いいよ……!』


零の振り絞るような声に、やっと百が振り返った。

振り返った百は、いつもと同じ優しい顔で安心したように笑った。


「……零。遅くなってごめんね」

『……ううんっ……ありがと……二人、とも……』


言いながら、涙が溢れてきた。

意識がはっきりしてきて、自分がどんなに恐ろしい状況にいたか徐々に思い知らされる。
そんな場所に、二人は危険を覚悟で助けに来てくれたのだ。背負うものだって、人一倍多いはずなのに。

恐怖とか、感謝とか、安心とか、いろんな感情が混ざって、瞳の奥底から湧き出てくる涙がとまらなかった。


「うわっ!ちょっと零、泣かないで!?」

「零!もう大丈夫だから!」


百と天が、必死に慰めてくれる。


――不思議だ。ついさっきまで、震えあがるくらい怖い思いをしていたはずなのに。

二人が今こうして側にいてくれてるだけで、どうしてこんなにも、温かくて、安心するんだろう。


『うん……ごめん……、二人が助けに来てくれただけで、私、もう十分だよ』


零の言葉に、百は困ったように笑ってから、梢に向かって口を開く。


「だってさ。よかったね。零はキミと違って、心も綺麗なんだ。よくわかったろ?……消そうと思えばいつでも消せる。それを理解した上で、今後の行動を改めなよ」


百はそういって、冷めた瞳で梢を見下ろすと、耳元で、小さな声で囁いた。




「もう二度と零に近づくな」




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