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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第21章 もう一度ここから





『だから……もう一度、私の特別になって。私をもう一度、百の特別にして』

「………」

『ねえ、百―――っ』





―――言いかけた言葉を遮るように、思い切り抱き締めた。


ぼろぼろと溢れてくる涙で、もう前なんか見えなくて。


オレはこんなに泣き虫だったっけ?

かっこ悪いところばっかり見せてるはずなのに

それでも君は、オレの隣を選んでくれるっていうの?




「……っそんなこと言ったら、もう二度と離してなんかやれないよ……。…それでもいいの?」

『……そうじゃなきゃ困る。…私を、百の最初で最後にしてくれるんでしょ…?前に、そう言ってくれたじゃん。百の答えは……?』

「………ばか。オレ、ほんとばかだ……ごめん、ごめんね、零」



静かに身体を離してから、見つめ合う。

大きく見開かれた彼女の瞳は、まるで答えを告げてくれてるみたいに透き通っていて。そのまま、ゆっくりとキスを落とす。



「――好きだよ、零。誰よりも何よりも。君を愛してる。」




―――零はやっぱり、オレを幸せにする天才だ。


悲しみのどん底にいたオレを

言葉一つで、こんなにも幸せな気持ちにしてくれるんだから


きみに出会ったあの日、あの瞬間から

解けない魔法にかけられたまま。


これからもずっと。解けることのない魔法にかけられたまま。





夜が少しずつ開けていく。ささやかな光が息を吹き返す。

空を覆う雲が支配していた世界を、ようやく薄明かりが包んでいく。それはまるで、これからの二人を照らす、確かな希望のようだった。




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