第5章 幼馴染
調査兵団に入団してから、数日が経った。
掃除や洗濯、食事の準備、その他の雑用など、新兵は意外と忙しい。
そしてそれらをこなす合間に、自分自身で訓練をして、次の壁外調査へと備えなければならない。
全く、訓練兵の時よりも断然大変だ。おまけに先輩方への気遣いも忘れてはいけないから、余計に神経を使う。
今日も私は、割り当てられた雑用をこなすため、兵舎内でくるくると立ち働いていた。
えっと、あそこの掃除が終わったら今度はあっちか。掃除が終わったら倉庫の整理にも行かないと…。
そんなことをブツブツとつぶやきながら歩いていたら、角を曲がってきた男性兵士とぶつかってしまった。
ドンッという衝撃を受けて、二、三歩後ろによろめく。手に持っていたホウキが、カランと音を立てて落ちた。
「申し訳ありませんっ」
兵団は上下関係に厳しい。前方不注意で先輩にぶつかってしまったとあれば、少しくらい小突かれるのも覚悟しなければならない。
私は後に待ち受けているかもしれない「教育」を思って、少し顔を青くしながらもバッと敬礼をした。
「あぁ、いや、こちらも不注意だった。怪我はないか?」
ぶつかった男性兵士は、かがみこむと、私が落としたホウキを拾い上げてくれた。
はい、と差し出されたホウキと、男性兵士の顔を見たとき、私は目玉が飛び出すかと思った。
「ライデン?!」
「え……?ん?あっ、お前っ、ラウラかっ?!」
私と同じように、今にも目玉が鉄砲のように飛び出すのではないかという形相で驚いていたのは、幼い頃からよく一緒に遊んだ幼馴染の男の子だった。
いや、もう17歳になったのだから「男の子」ではなく「男性」と言ったほうがいいかもしれない。