《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第2章 サギ師のあなたに脱がされて
《ゆめside》
「壊したわね」
女性の刺すような声に私は震えあがった。
目の前の床に散らばるのは、弾け飛んだブレスレットの石。この女いわく、全部で500万円の価値があるらしい。もちろん、とてもそんな高いものには見えないが。
「すみません。でも、あなたたちが無理やり腕につけようとしてきて……」
「は? 私たちのせいにするの?」
「っ……」
女は長いネイルでコツコツとショーケースを叩いた。
「あのねぇ、あなた学生かもしれないけど、社会のルールじゃそんな言い訳は通用しないのよ? お金で解決できる問題はまだマ・シ! わかる?」
さっきまであんなに愛想よく笑っていたのに。
もしかして弁償しろって言ってるの?
はじめから買う気はないって伝えたし、試着だって断った。なのに「いいから、いいから」と強引に私の腕につけようとしてきて、突然ブレスレットは弾け飛んだのだ。
「あの! 私は……」
「おいおい、ねーちゃん! しょうがねーなぁ。あんた、電話持ってっか? まだ学生みたいだし、保護者出してもらおうか? あぁん?」
紫色の派手なスーツを着た男が私の肩を掴んだ。
この二人に捕まったのは、大学の授業が終わり、アルバイト先の『霊とか相談所』に向かっているときだった。
幸福になるブレスレットがあると声をかけられ、あまりの胡散くささに最初は断ったものの、口車に乗せられて『見るだけなら』と店につい入ってしまったのだ。
今日は特別な日だから、髪型も可愛くアップにしてきたし、服も新しく買ったワンピースを着てきた。メイクだって普段よりも丁寧に仕上げたのに、よりによってこんなことに巻きこまれるなんて……。
「おい、ねーちゃん! 聞いてっか? 電話貸せよっ! なぁ!!」
男が私のバッグを掴む。
「きゃ! は、離してっ!」
瞬間、スマホの着信音が鳴り響いた。