第2章 お銀さん
どれくらい時間が経ったのだろうか
ゆっくりと目を開けると私は泥まみれで転がっていた
周りを見ずに走ってきたため、ここがどこだかわからない。
落ち着いて周囲を見回すと、近くに川が流れているようだった。
とりあえず、顔に付いた泥を流そう。
そう思い、ゴツゴツした岩場をゆっくりと下りて川に手を浸した。
冷たい水の感触に、少し冷静さを取り戻した。
あの男が近くにいないのには安心したが、今の私は完全な迷子だ。
腕時計を見ると時刻は15時を指していた。
コンビニで待ち合わせしたのが13時だったから、2時間くらいしか経っていないのか。
どのくらい気を失っていたかはわからないが私の体力ではそんなに遠くまでは走っていないはずだ。
日没まではまだ時間がありそうだけど、携帯はカバンの中だから助けは呼べない。
持っているのは時間を見る以外何の機能もないアナログな腕時計とハンカチ、リップクリームとアメが1つ
山で一夜を過ごすには無防備すぎる。
どうしよう、どうしよう、オロオロしてばかりいたら背後から不意に声をかけられた
「あんた、こんなとこで何してるんだい?」
これが私とお銀さんの出会いだった