第9章 茨戸
百之助さんとセックスをした。
情事の最中はただただ気持ちよくて、快楽に溺れてしまっていた。しかし終わってみると頭が急に冷静になり、嫌悪感のようなものが沸き上がってきた。
性欲に飲まれてしまった自分に対するものなのか、男の欲に直に触れたことによって生まれたものなのかはわからない。
…大好きな百之助さんに抱かれて幸せなはずなのに、少女漫画のヒロインたちはみんな幸せそうにしていた。
お銀さん達もすごく幸せそうだった。
百之助さんからも好きだと言われているのに私の心には何故かモヤモヤしたものが残っていた。
そんな事を寝転びながら考えていると、百之助さんが顔を覗き込んできた。
「後悔してんのか?」
それはない。そんなことは全くないのだけれど…
「そんな事をないですよ。百之助さん、大好きです」
そう言って百之助さんにすり寄った。
腕まくらをして頭を撫でてくれる。好きな気持ちに嘘はない。それなのになんだか百之助さんを騙しているような気分だった。