第5章 取引
私たちは一先ず町外れの宿に身を寄せた。
要所要所に第七師団がいるのだ。明らかに尾形上等兵を探している。
「尾形上等兵、どうしましょう。すごい探されてますよ。」
「…アリス、その上等兵ってのやめてくれねぇか。」
私の話を聞いていたのだろうか?
「だって…」じゃあなんと呼べばいいのだろう。
「俺の名は百之助ってんだ。」
「百之助さん?」
「おぅ」
百之助さんかぁ。名前で呼ぶのってなんだか急に仲良くなれた気がして嬉しい。
百之助さん、百之助さん、まだ呼びなれないその名を私は何度も繰り返した。