第7章 黒雪の策略
パリの街、郊外。とある屋敷にて………。
「伯爵の屋敷に、女が招かれてるみたいだぜ?」
情報屋の少年は、にやりと笑った。
「………!
その女性について、もう少し詳しく教えてくださいますか」
「あぁ。その女は………」
少年が挙げていく特徴に、予測が確信へと変わる。
(間違いありませんね。やはり………、彼女は………。)
「ありがとうございます。
………これは報酬ですよ」
少年に、金貨の入った袋を握らせた。
「へへっ、ありがとな! ウィル!」
彼は大喜びで、部屋を出ていく。
一人きりになった部屋で、彼女の姿を思考に載せる。
花のように微笑う彼女が眩しくもあり、そして憎らしくもあった。
「貴女がどんな表情を見せてくれるか………。
ふふっ………、これから楽しみですよ」
左右違う色彩の瞳が 漆黒の月を見つめていた。