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秘め事【イケメンヴァンパイア◆SS集・裏】

第8章 月夜【テオ→主人公】


中庭からだいぶ離れたところで、テオは後ろを振り返った。


棄てた筈の日々を、喪った人々を想い、彼女は毎夜泣くのだろうか。

悲しみに満ちた涙で枕を濡らし、眠れぬ夜を過ごすのだろうか。



そこまで思考に載せて、彼は舌打ちした。



………いや、そんなことは知ったことではない。

どちらにせよ、あの女の境遇は同情すべきじゃない。


それでも。テオの眼裏には、彼女が零した涙が焼きついていた。


関節が白くなるほどに握りしめた手を開くと、爪の跡がついていた。

惹かれていると自覚したその時から、ふとした彼女の仕草や表情ばかりが目を引きつける。


「眠れない夜を過ごすのは、俺も同じ………か」

唇を自嘲に歪める。

月明かりだけが、その横顔を照らしていた。





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