第1章 Rapunzel【伯爵・★】
「――どうしたの」
『サン・ジェルマン伯爵』の私室。そこに彼女を閉じこめて。
白いレースカーテンの狭間から、蒼い月灯りが降り注ぐ。
彼女は、自身の身体を抱きしめるように腕を掛け そして怯えたように瞳を揺らしていた。
「………ゆるして」
その表情は、怯えを宿してはいるがとても美しくて。
「生憎と、俺は嫉妬深いんだ。
………君が俺だけのものになると誓うのなら、一度だけで容赦してあげる」
「…………っ」
彼女を押し倒す。彼女の瞳が恥ずかしそうに揺れていて。
その綺麗な瞳に囚われたのは、いつだっただろうか。
彼は自問して、答えを見つけた。
(彼女の笑顔を知ってから…………彼女のしたたかな優しさを知ってから。
きっとそうなんだろう)