第14章 【番外編】マツノトクエスト 第十三章
「思い出した! 思い出したよナス子姉!! ズボラでグータラで残念で救いようがない程女子力に欠けてて、口を開けば面倒臭いを決まり文句にいっつも言う馬鹿な姉さん!! なんっで忘れてたんだろうってくらい不思議だけど……呪いが解けたんだっ」
「オイ、思い出すとこそこ?! もっといい事言ってくれてもいいと思うんだけど……っ」
「あれぇ? ナス子姉泣いてるぅ?」
「っ、泣いてない!!」
この世界の住人になってしまっていたトド松。
ドライな口調は変わっらなかったけど、この言葉の意味が、思い出されているのと思い出されていないのでは違う。
こんな言われよう、キレてもおかしくないのに……嬉しくて泣きそうになってしまった。
もう一人ぼっちじゃないんだ。
パーティの仲間はいたけど、一人でモヤモヤと寂しい気持ちを抱えなくていいんだ。
「トド松~……うぇっ……っぅ」
「やっぱり泣いてるじゃ~ん、ほんっと泣き虫だよねぇナス子姉って! チョロ松兄さんは仕方ないとしても、おそ松兄さんとカラ松兄さんはぼくなんかより仲間になったの早かった癖に全然思い出してないなんて……このゲーム、ちょっと怖いね。いつの間に呪いなんてかけられたんだろ」
地に突っ伏したままの私達、背中に当たる地面は冷たく感じるけど、しかし温かな体温とトド松の言葉が私の心を灯してくれる。
年上だと言うにも関わらず、子供をあやすかのように私の頭を撫でてくれるトド松を、私も強く抱きしめてしまった。
「ぐぇっ……ナス子姉!! つ、潰れる……ていうか内蔵でそう! その怪力どうにかしてよぉ」
「忘れられて寂しかった分のお返しじゃー!」
「死んじゃう! 死んじゃうからあぁあああぁ」
その後、この世界でここに至るまでの経緯、そして愚痴、全てをトド松に吐き出すとトド松は眠気に耐えられず気づけば私は一人ブツブツと朝まで喋り続けているのであった。