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Little lieR【イケヴァン◆ifイベ原作】

第1章 はじまりの夜


「セバスチャン、………セバスチャン!」

翌日、『 中庭へお越しください S 』と書かれた羊皮紙を見つけて、彼女は側近の姿を探していた。

「もう、どこにいるの………あっ!」

突然背後から伸びてきた手に短剣を宛てがわれる。

「………お前がこの屋敷の主人か?」

「えぇ、そうです。」

「どうして、ここの屋敷の門は開かない? ………答えろ!」

その言葉に、一瞬にして悟る。

(セバスチャン………。本当に、あなたは………。)

「1か月立たないと開かないよ。何をしても………ね」

青年は、彼女の真意を探るようにじっと瞳を見つめた。


「セバスチャンがあなた達を連れてきたのでしょう?

側近に代わって、主人の私が詫びを申し上げます。………ごめんなさい」

深く頭を下げれば、複数の吐息を封じる声。


「ナポリオーネ、剣を下ろしてやれよ」

「レオ、だけどッ………!」

「そーだよ。こんな可愛い吸血鬼さんに刃を向けるなんて………さ」

『アーサー』と呼ばれていた青年が、甘く笑む。

「それも、お聞きになってたんだね………。」

彼女は唇をかむ。


「そんな顔しないで。………あなたには、哀しい顔は似合わないよ」

そっと頬に触れてくるのは、『フィン』と呼ばれていた陽だまり色の髪をした青年。

「私に触れないで。………じゃないとあなたが穢れるよ」

そして、彼らをまっすぐに見つめて告げた。


「あなた達に忠告をしておくよ。

この屋敷から無事に出たければ、私に近づかないこと………いいね?」

逃げるように、つま先を部屋へと目指した。




「………なんだか寂しそうに微笑うコだったねー」

蕾のエリカを摘み取り、不敵に笑んだアーサー。

「そうだな。………おいナポリオーネ、どうしたんだ」

彼女の去っていった方向を見つめていた彼は、レオの声で思考をかき消される。

「………何でもねえよ」


どうかしている。………哀しげな表情の意味を知りたいと願っているなんて。

けれどざわめく胸を、押し込めるすべはなかった。
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