Little lieR【イケヴァン◆ifイベ原作】
第9章 シナリオ
その夜のこと。
「あぁ………。本当に美しいのね………」
薄手の夜着にショールを巻きつけただけの姿で、中庭へと降り立つ。
「花は散りゆく未来があるからこそ、咲き誇る今が美しい………。
そう思わない………? お兄様」
夜闇から姿を現したのは………兄公爵。
「気づいていたんだな………。レフィリア」
ふっと瞳を和ませ、彼は微笑んだ。
「お兄様。あなたはどうして戻ってきたの?」
唐突に問いをぶつける。
それでいて、『すべてを質問してほしい』と訴えるように兄を見つめた。
「おまえをいや、誰よりも愛しいあなたをわが妻にするためにさ」
告げられたのは、思いがけない言葉。
「お兄、様………」
さりげなく離れようとした彼女の手首を、そっと。
だけれど抗えない強さで捕えて。
「いやっお兄様ッ! 手を離して………っ!」
「………あの人間どもに懸想しているのか」
思わず、びくりと背が震える。それは、肯定に等しくて。
「それなら………いっそこうしてしまおう」
彼女の耳元で、なにかを呟く。
それを聞いた途端、視界が漆黒に染まり。
ぐらりと傾きかけた身体を、しっかりと抱き留めた。
「………主を攫った張本人が私だと分かれば、君はどうするんだい? セバスチャン」
浮かべた黒い笑みをそのままに、彼は屋敷を去った。