Little lieR【イケヴァン◆ifイベ原作】
第1章 はじまりの夜
「………また『漆黒の森』を眺めているのですか?」
側近の声に、屋敷の主であるレフィリアは穏やかな瞳で彼を見つめた。
「えぇ………。『あの夜』ことを、忘れたくはないから」
彼女―――レフィリアは、純血種のヴァンパイアだ。
父は幼い頃、原因不明の病に倒れやむなく帰らぬ人に。
そのあとずっとそばで彼女を守ってくれていた母も一族も
人間たちの『吸血鬼狩り』に遭い亡くなっているため、生き残りは彼女だけで。
『あの夜』………一族唯一の娘を逃がすため
囮となり惨殺された一族のことを
レフィリアはどんなに怖くても時折思い出すようにしていた。
その忌まわしい記憶を宿す、屋敷を囲うように鬱蒼と茂る『漆黒の森』。
(お母様………。
私は、あなたや一族の方々の『願い』を無下にするかも知れない………。)
窓の外でうなる風に、思考を託す。