第1章 D-grayman ピエロの涙/アレン (非恋)
雪がハラハラと舞い降り、アレンは私に被った雪をパッパと払ってくれる。
私は彼の手が好きだ。
「──壱伽、コレをどうぞ。」
ポケットから出てきたのは小ぶりの巾着。
アレンは紐を解くと包みを開げ、私に見やすいように傾けてくれる。
『コレは…金平糖?へぇ、懐かしい。小さい頃に食べたきりだったの。ありがとう!』
「コチラでは珍しいでしょう?喜んで頂けましたか?」
『勿論!』
「壱伽、知ってますか?金平糖は“ピエロの涙”だって言われてるんですよ?」
『ピエロの涙?』
「"恋をしたピエロが流す涙"なんですって。昔、マナが言ってました。」
『甘い、星屑の涙か…ロマンチックね。』
「綺麗な例えですよね。けど、それを聞いた頃の僕には、どうもしっくりこなくて…不思議だったんです。」
『どうして?』
「基本的に"涙"っていうのは悲しい時に流れる物だし…ピエロのペイントを塗ったことがある僕としては、涙で崩れた色が金平糖のような可愛い色のお菓子に例えること事態に納得できていなかったんです。」
『ふふ、小さなアレンは現実主義だったんだね?』
「でも今なら“その例え”が解ります。」
彼は瞳を細め微笑んだ。
「…きっとピエロの涙は悲しい涙じゃなかったんだ。」
──“彼”はきっと、
凄く甘い恋をした。
それは、空に輝く星のような…
ささやかな光。
色とりどりの“想い”を込めて、
ピエロは笑顔で泣いたんだ。
「だから、口に含んだ時、こんなにも優しい気持ちにさせる。」
胸に手を当て、目を伏せる彼は…
とても儚く、幸薄い。
『…アレン。』
「僕もピエロ(同じ)ですから。」
私を真っ直ぐ見つめる瞳は何処までも優しくて、私は零れ落ちる涙を耐えようと、顔を歪めた。
彼は私の墓碑の前で膝を付き、永遠を誓う。
「──壱伽、愛してます。」
これからもずっと…
End
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