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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第9章 【リディクラス!!】


 クリスは当然のこと、ハーマイオニーもピンと手をあげていたのに、先生が指したのはその隣に立っていたハリーだった。
 2人の恨みがましい視線から遠ざかる様に、ハリーは身じろぎしながら答えると、ルーピン先生がにっこり笑った。

「そう、ボガートをやっつけるのには誰かと一緒にいるのが好ましい。しかしそれだけではボガートはやっつけられない。本当に必要なのは、精神力と、『笑い』が必要なんだ。――そこで、君の出番だ。ネビル!」

 突然声を掛けられて、ネビルは小さくヒッと叫び声をあげた。怯えるネビルを安心させるように、先生はネビルの肩に優しく手を置いた。しかし、その顔には相変わらず悪戯っ子のような笑みを湛えている。

「ネビル、君の一番怖いものは何だい?」
「……イ……プ先生」
「ん?ごめんねネビル、良く聞こえなかった。もう1度言ってくれるかい?」
「ス……スネイプ、先生」

 それを聞いて、みんな納得して笑い出した。確かにネビルが一番怖がっているのはスネイプに違いない。皆につられてネビル自身もはにかんでいた。そんな中で、ルーピン先生だけがう~んと悩んでいた。そして何か思いついたようにポンッと手を叩いた。

「ネビル、君はおばあさんと一緒に暮らしていたね?」
「は――はい。でも僕、ボガートがおばあちゃんに変身するのもイヤです」
「いやいや、そうじゃない。ネビル、おばあさんがいつもどんな格好をしているか想像できるかな?」
「はい……いつもハゲタカのはく製がついた帽子に、長いドレス。それにキツネの毛皮の襟巻に、赤いハンドバッグを持っています」
「よし、それじゃあボガートが出てきたらそれをよく想像して、こう言うんだ、『リディクラス!』とね。上手くいけば、おばあさんの格好をしたスネイプ先生に変身するはずだから」

 これを聞いて、笑わない生徒がいない筈がなかった。みんな大爆笑して、職員室が静かになるまでかなり時間がかかった。そしてやっと落ち着いたころを見計らって、先生が洋箪笥の取っ手に手をかけた。
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