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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第8章 【心ここにあらず】


「ハリーもロンも気にする事じゃないわよ。あんな占い当てずっぽうじゃない」
「うん、僕はもう気にしてないけど……」

 どんな時でも食欲旺盛なあのロンが、今日に限っては視線を落としてチビチビとシチューを口にしていた。それほど、魔法界にとってグリムとは不吉な存在として恐れられているのだ。しかし生粋のマグル生まれのハーマイオニーや、ほぼマグル生まれのハリーにとって、その脅威は本当の意味では理解できないものだ。それが分かっているので、クリスは何も言わず黙々と食事をつづけた。

「……ねえ、ハリー。君、黒い大きな犬を見かけたりしなかったよね?」
「ううん、見たよ。ダーズリー家から逃げたあの晩に」

 ロンの決死の質問に、ハリーはケロッとして答えた。それを聞いて、ロンの顔がみるみる青くなっていき、ロンの方が死んでしまうんじゃないかと思われるほどだった。それを見て、ハーマイオニーは「大げさよ」とでも言いたげにため息を吐いた。

「馬鹿みたい、ただの野良犬でしょ」
「君はグリムがどれほど恐ろしいか知らないからそんな事言えるんだ!僕の――僕のビリウス叔父さんがグリムをみて――そうしたら……24時間後に……死んじゃった……」

 その時の恐怖を思い出したかのように、ロンは、最後は消え入りそうなほど小さな声で呟いた。ロンがあまりに真剣だったので、ハリーも少し怖くなってきたのか、表情が曇り始めた。
 平然としているのはハーマイオニーだけだ。いや、むしろグリムなんておとぎ話も良いところで、はなから信じていないという確信さえ見える。
 何かこの場をなだめる良い手は無いものか。クリスは少し考えてから、そう言えば自分も夏休み中に大きな黒い犬に襲わていた事を思い出した。

「まあそんなに気にするなよ2人とも。私も夏休みに黒い大きな犬に襲われたけど、かすり傷で済んだぞ」
「ええっ!?クリスも!!?――それで、どうしたの?」
「私が思うに、あれはただの野良犬だったな。初めは私を食い殺そうとしていたけど、ネサラを筆頭に我が家のカラス共に襲撃されて、可哀相に悲鳴を上げていたよ」
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