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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第8章 【心ここにあらず】


 『占い学』の授業が終わって『変身術』の教室に行くまで、ハリーはもちろんロンもクリスもハーマイオニーも口を開かなかった。それだけではない、『占い学』を受けた全員の生徒がまるでハリーが階段から転げ落ちて死んでしまうんじゃないかと、はらはらした目で見ていた。
 それはマクゴナガル先生の『変身術』の授業が始まっても続いていた。噂に尾びれと背びれがついて『ハリーの命はあと1時間と持たないだろう』とまで言われていた。そのおかげで、マクゴナガル先生が、自分を動物に変身させる『アニメ―ガス』という術について説明し、なおかつ先生自身がメガネの模様があるトラ縞の猫に変身しても、誰も何も言わなかった。

「こんな授業は初めてです!皆さん今日はどうしたのですか!?」

 生徒達の注目が自分に向いていないことに、先生は少しおかんむりの様だった。恐らくこれまでの授業の中で、先生が猫に変身して注目を浴びなかったことが初めてなのだろう。シーンと静まり返った教室の中で、皆がハリーの方に目をやり、仕方なくハリーは立ち上がってトレローニー先生の予言を説明した。

「ああ、よろしいですポッター。座りなさい」

 トレローニー先生の予言を聞いても、マクゴナガル先生は平然としていた。そしてフンッと鼻息とも溜め息ともつかない息を吐くと。先生は一気にまくし立てた。

「ハッキリ言いましょう、トレローニー先生が誰かの死を予言するのは新入生達を歓迎するあの人なりの流儀です。そしてトレローニー先生が着任してから10年以上経ちますが、今までに死んだ生徒は一切いません。ええ、ただの1人もです!分かったら皆さん教科書の3ページを開いてください」

 それから生徒達は一斉に教科書を取り出すと、マクゴナガル先生はいつもより荒々しくチョークを黒板の上ではしらせた。まるでインチキ占いで生徒達を脅かすトレローニー先生に恨みを込めているかのように。そして授業が終わると、先生はもう馬鹿な占いなど頭から締め出す勢いで宿題をたっぷり出した。
 そのおかげか、大半の生徒はもうハリーの事など頭から吹き飛んでいた。しかし少数の――気まずい事に、ロンを含めた――生徒たちは昼食中もハリーの方をチラチラ見つめて内緒話をしていた。
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