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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第31章 【ピーター・ペディグリュー】


「前足だ……」
「前足がどうかしたって言うんだ?」
「指が一本無い、ピーターと同じだ」

 それを聞いて、クリスは雷に打たれたような衝撃が体中を駆け巡った。そうだ、確かクリスマス休暇前に『3本の箒』に立ち寄り、たまたま聞いてしまった話しでは、ピーター・ペディグリューの亡骸で一番大きかったのは指だったと。と、言う事は――。

「それじゃあ、あいつは自分で指を千切って逃げたって言うのかい?」

 ルーピン先生は驚きと怒りの混ざった声で言った。ブラックは新聞の切り抜きをまた折りたたんでローブに仕舞った。

「ああ、そうだ。奴を追い詰めた時、奴は道行く人全員に聞こえるように叫んだ。私がジェームズとリリーを裏切ったと。それから私が呪文をかけるよりも先に、指を切って、その場にいた大勢の人を巻き込み道路を吹き飛ばし、そしてネズミに変身して下水道に逃げ込んだんだ」

 確かに、辻褄はあっている。だが本当にそんな事あるのだろうか。自分の身を隠すため、自分で自分の指を切り、友人を貶め、何人もの罪もない人を殺すだなんて……。

「ロン、スキャバーズはいったいどこで指を無くしたか知っているかい?」
「そ……そんなの知らないよ!でもきっと他のネズミと喧嘩かなにかしたんだよ!こいつは何年も家族のおさがりだったし、確か――」
「確か、12年……だったね?」

 ルーピン先生の問いかけに、ロンは何も言えなかった。何か一生懸命言い訳を探しているように見えた。しかしなにも浮かばなかったらしい。ルーピン先生は言葉を続けた。

「普通の家ネズミの寿命は2、3年だ。どうしてそんなに長生きしたのか、不思議に思った事はないかい?」
「ぼっ、僕達がちゃんと世話をしていたからだ!」
「そうか……だが今はあんまり元気ではない様に見えるようだがね。これは私の推論だが、シリウスが脱獄したと聞いてやせ衰えたんじゃないのか?自分を殺しにやって来る、そう思って」
「違う!コイツは……コイツはその猫が恐ろしいんだ、その猫が狂った様にスキャバーズを襲うから!!」

 ロンはクルックシャンクスを指さした。ロンは必死になってスキャバーズを弁護していたが、どれもこれも説得力に欠けるものばかりだった。
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