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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第31章 【ピーター・ペディグリュー】


「我輩にきっかけさえくれれば、確実に仕留めてやる」
「このっ……薄汚い奴めがっ!」

 しかし、ブラックの体はピタリと止まったままだった。2人は睨み合い、その顔には憎しみが浮かんでいた。どちらも同じくらいお互いの事を憎んでいる。そんな風に見えた。
 クリスは隙を窺っていた。もしスネイプが一瞬でもブラックから目をそらしたら、その時振り上げた手を下ろしてやる。床でもがいているルーピン先生を見て、クリスは決心した。

「あ、あの――スネイプ先生?」

 その時、ハーマイオニーがおずおずと1歩前に出て、恐々と口を開いた。しかしスネイプの視線はブラックに向いたままだ。

「この人達の言い分を聞いてあげても、その、良いんじゃないでしょうか?」
「ミス・グレンジャー、君は退学処分を待つ身ですぞ?いったいどれだけの許容範囲を超えたと思っているんだね?君だけじゃない、ポッターも、ウィーズリーも、グレインも同じ身だ。分かったら一生に一度くらいその口を閉ざしていたらどうだ」
「でも、もし――もし勘違いだとしたら――」
「黙れこの小娘っ!!!分かりもしない事に口を出すなっっ!!!!!」

 スネイプがまるで狂ったように叫んだ。いや、これは正気の沙汰ではない。学生時代の復讐の為、スネイプはいつもの冷静さを欠いている。その証拠に、ブラックを睨みつけた目はギラギラと輝いていた。

「復讐は蜜より甘い……」

 この時をどんなに待っていた事かと言わんばかりに、スネイプは笑いながら杖をブラックに突き付けていた。

「貴様を捕まえるのが我輩であったらとどんなに願った事か――正直このままディメンターに引き渡すのが惜しい……出来るなら、この場で殺してやりたいくらいだ」
「奇遇だな、私も出来るならお前を殺してやりたいと思っているよ」
「ならそうしたまえ、出来るのなら……の話しだが」

 ブラックの顔が、憎しみから殺意に変わった――一瞬、その一瞬の出来事だった。ブラックは突きつけらえた杖を物ともせず、スネイプに向かって体当たりをした。そして低く唸ると、見る見るうちに顔が伸び、手足の爪が鋭くなり、体は黒い毛に覆われて、あっという間に大きな黒い犬に変身した。しかし、それよりもクリスが杖を下ろす方が速かった。
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