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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第28章 【シリウス・ブラック】


「嫌ぁ!ロンッ!!」

 ハーマイオニーが悲痛な叫び声を上げた。ハリーはなんとか後を追おうとしたが、『暴れ柳』が枝を振り回しているので近づくことが出来ない。犬はその間にもロンの体を穴に引きずり込み、もうロンの姿は片足しか見えなくなっていた。

ロンは何とか引きずり込まれまいと、足を曲げて根元にひっかけ抵抗していた。
 ――が、突然バキッ!と嫌な音がしたと思うと、ロンの足が曲がってはいけない方向に曲がっていた。それを見てクリスは頭が真っ白になった。抵抗できなくなったロンは、そのままズルズルと穴の中へ引きずり込まれていった。

「ロンッ!ロンーーー!!!」

 ハリーが大声を上げて叫んだ。しかし返事は帰って来ない。ハーマイオニーが血の気を失った顔でハリーにすがり付いた。

「ねえ、ハリー、誰か助けを呼んできましょう?じゃないとロンが……」
「駄目だ!そんな時間はない、助けを呼んでいる間にロンがアイツに喰われてしまう!!」
「それじゃあどうすれば良いの?」
「あの犬が通れたんだ、僕達だって『暴れ柳』をかいくぐって何とか穴に入れるはずだ」

 しかしそう簡単には行かなかった。穴に近づこうとすると、『暴れ柳』はその枝を拳の様に振り回し、誰一人近づけさせなかった。
 クリスも杖を取り出して厳戒体制を取った。召喚の杖は、『暴れ柳』の樹下に落ちている。このままじゃ拾いに行く事さえできない。何とか杖を拾って、ロンを助けに行かなければ。
 クリスは捨て身の行動に出た。とにかく走って杖さえ手に入れば、精霊を召喚し、『暴れ柳』の太い幹さえ真っ二つにすることが出来るはずだ。

 クリスが『暴れ柳』に向かって突進していくと、その横を素早い影が通り過ぎていった。クルックシャンクスだ。クルックシャンクスはクリスを追い越し、振り回される枝をサーッと避け、前足で木の節の1つに乗せた。すると、たちどころに『暴れ柳』は動きを止め、ただの一本の柳の木に変わった。

「クルックシャンクス!この子、どうして分かったのかしら!?」
「あの犬の仲間なんだ。僕、以前2匹が一緒に森の付近を歩いているのを見た事がある」

 ハリーが杖明かりを灯し、慎重に穴に近づきながら言った。クリスも杖明かりを灯し、召喚の杖を取り戻すと、ゆっくり穴に近づいた。
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