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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第28章 【シリウス・ブラック】


「ハグリッド、何か僕らにできる事はないの?」
「そうだ!ダンブルドア先生は?」

 ここまで来てしまっては、もう決定を覆す力を持っているのは校長のダンブルドアだけだ。一縷の希望をもって、ダンブルドアの名前を出すと、ハグリッドは大きく首を横に振った。

「あのお方は出来る限りの事をして下さった。だけんども委員会の決定を覆す事は出来なかった。ダンブルドア校長先生は、連中にバックビークは危険じゃねえって何度も言ってくれた。けど、あのルシウス・マルフォイが……委員会を脅して……それで連中は怖気づいて……それに処刑人のマクネアは、マルフォイの昔っからのダチだ。奴がやれって言ったら、喜んで首をはねるだろうよ……」
「マクネア……確か聞いたことがあるな。おじ様の知り合いで、純血主義のいかれた奴だった気がする」
「そんな奴を差し向けるなんて――マルフォイの奴、どこまで汚いんだ!」

 お茶を入れていたロンが、力任せに戸棚を叩いた。するとまた棚からカップやら何やらが落ちて割れた。その時、灰色の小さい生き物が割れた水差しから飛び出てきた。驚いたことに、それはスキャバーズだった。

「ス、スキャバーズ!!?」
「どうしてここにスキャバーズがいるの!?」
「分からない。でも良かった、生きていたんだ!おいで、スキャバーズ!」

 しかしスキャバーズはロンから逃げる様に床の上をところかまわず走り回った。ロンはスキャバーズを捕まえようと必死になって追いかけまわした。
 やっとベッドの下に入り込んだスキャバーズを、腹ばいになって引っ張り出すと、しっぽを持ってぶら下げた。

 スキャバーズはしばらく見ない間に、くたびれていたのが余計にくたびれて無残な姿をしていた。あんなに丸かったのが今や痩せこけ、毛が抜けてあちこちハゲが出来ている。しかも飼い主の顔さえ忘れたのか、ロンの手から逃げ出そうと必死になっている。

「どうしたんだよ、スキャバーズ!?大丈夫、ここには猫はいないって。お前を傷つけるものは誰もいないから安心しろよ」

 ロンは必死になってスキャバーズを胸ポケットに突っ込もうとしていたが、スキャバーズは暴れて一向に大人しくしようとしない。
 その時、突然ハグリッドが立ち上がり、視線を窓の外に向けた。
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