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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第27章 【本領発揮】


「今夜……月が満ちるころ……闇の帝王の召使が、自らの鎖から解き放され……主人の元へと帰るだろう……闇の帝王はその力を借りて、再び立ち上がるであろう……以前よりも強大に、より恐ろしく……今夜だ……月が満ちるころ……事が起こるであろう――」

 恐怖におののくハリーとクリスを目の前に、トレローニー先生の頭がガクッと前に傾いたかと思うと、ゆっくりと首を起こし、先生はまるで寝ぼけていた頭を起こすかのように左右に首を振った。

「あら、ごめんあそばせ。この暑さでしょう……私つい、うとうとと」

 何も覚えていないのか、それともこれも先生の演技なのか定かでは無かった。ハリーもクリスもただじっとトレローニー先生を見つめていた。

「ミス・グレイン、いつからそこにいたんですか?まだ名前を呼ぶ前だって言うのに、貴女はせっかちですわね」
「先生、先生はたった今ご自分で仰いましたよね?闇の帝王が再び立ち上がる――と」
「闇の帝王?もしかして『例のあの人』の事ですの?まあ貴方、私冗談でもそこまで大層な予言はいたしませんわ」
「でも、先生は確かに!!」
「声を押さえてくださらない!?もし私が『例のあの人』が復活すると予言したなんて皆にふれ回れたら、頭がおかしくなったと言われしまいますわ!――さあ、ミス・グレイン。心を落ち着けたら試験に臨みましょう」

 ハリーもクリスもそれ以上何も言えず、ハリーは「下で待ってる」と言って梯子を下りて行った。
 クリスは大きな水晶玉を挟んで先生と対面するよう椅子に座ると、目を閉じて先程の事は一旦忘れようと努めた。

「さあ、リラックスしたら瞼を開けて……何が見えます?」

 クリスは半分瞼を開けて、ぼんやりとした目で水晶玉を見た。すると水晶玉のもやが、だんだん形を変えていっているように見えた。それは、特に暑いあの夏の日に出会った、大きな犬の形をしているみたいだった。
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