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君の涙【ヒロアカ】

第3章 そして、春



 色々聞きたそうな顔をしていたデクと、驚きのあまり固まっていたかっちゃん。そりゃそうだろうな。かっちゃんとは本当に何も話せていない。来て早々更衣室に移動したため、2人とちゃんと話すことができなかった。

 後で絶対ちゃんと話そうと心に決め、グラウンドに出ると、今から個性把握テストを行うと言われた。入学式もガイダンスも一切ないらしい。今までも体力テストはしてきたけど、個性は使わないのがルールだった。まずは自分の個性の最大限を知るために、このテストは行われる。
 見本でかっちゃんが個性を使ったボール投げをすると、普通ならありえない記録を出した。さすがかっちゃん。「面白そう」という誰かの発言に、担任の相澤先生が、聞き間違いだと思いたいことを言い放った。

 どうしよう。個性を使って、だなんて。今まで隠してきたから上手く個性を使えるかとても不安だ。周りの人を見るとどこか自信があるようで、早くテストをしたくて仕方ないように見えた。
 そう考えているあいだに第一種目の50m走が始まった。

 『すごい…みんな個性を使いこなしてる』

 今までほかの人の個性を見る機会なんてあまりなかったので、みんなの様子に目を輝かせずにはいられない。今ならデクのヒーローオタクの気持ちもわかる気がする。
 うまく使えないとか関係ない。私だって雄英に入ったんだ。それなら全力で挑むのみ。せっかくパパが作ってくれた機会を無下にすることはしたくない。立ち幅跳びなら個性を使って記録を出せるはず。
 次の種目は立ち幅跳び。ラインの前に立ち翼を出そうとする。

 『……なんで?』

 どんなに翼を出そうとしても出てこない。

 「どうしたんだろ?」
 「後ろ詰まってるぞ~」
 「おまぇらうるせえっ!黙って待ってろっ!!」
 「……なんでお前がキレてんだよ」

 後ろで順番を待つ人に急かされ、個性を発揮できないまま思いっきりジャンプする。

 「…2m15」

 ボソリと相澤先生がつぶやく。一般的な平均よりは高いけど、それでもここでは平均以下の記録だ。中学の頃よりは伸びていることに正直に喜べない。
 なぜ個性が使えなかったのかは原因不明だ。このままでは必然的に最下位は私になる。そうなれば、入学して早々除籍になってしまう。なんとかしなくちゃ。残りの種目を見るが私の個性を発揮できそうな種目はもうない。

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