第6章 Ripple
煙が徐々に晴れていく。
場外の壁に打ち付けられていた緑谷くんは、音を立てて地面に伏した。
『み……緑谷くん、場外。轟くん、三回戦進出!』
半分焼けてしまったジャージに、呆然とした表情。
またこみ上げてくる涙を息を止めて、堪えて。柄にもなく立ち上がり大声を上げた。
「かっこよかったよ!!」
轟くんはぼうっとした顔のまま、こちらを見上げた。ざわめく観客の声が遠く聞こえる。
ゆっくりと、目が合って、私はいつもみたいに笑った。
轟くんも安堵したように表情を和らげ、微かに微笑んだ。
「そうだ!いい試合だったぞ!!」
「おつかれー!」
私に続いて飯田くんが声をかけると、あちこちから労いの言葉や称賛の声が上がった。
観客の間では緑谷くんが何をしたかったのか、議論の種になっていた。それを知るのは一部の人間だけなのだろうと思うと少し寂しい。だって、彼は一人の人間を地の底から救いあげた、ヒーローなんだ。愚か者だなんて評価されるのは何ともやりきれない。
きっと彼はそんな事気にしないんだろうけど。
二人が退場した後、私は戦いの余韻からか暫く呆けてしまって、何も考えられなかった。
唯一はっきり感じたのが、早く轟くんに会いたい、という気持ちだった。