第5章 目を光らせて
「では、よろしくお願いします!」
委員長が飯田に決まった後、他の委員を決めようとなる。
飯田は礼儀正しくそして嬉しそうに頭を下げ、八百万は少し面白くなさそうに口を尖らせている。
それぞれが思い思いの反応を見せる中、
相澤は相変わらず、寝袋の中でモゾモゾしていたが────教室の1番奥の席、そこに誰も座っていないことに気付いた。
この状況で妹がいないことに、僅かながらに動揺する。
「おい、依田はどこだ?」
生徒たちもその席を見て、不安げな顔をする。
「私見てないや…」
「昼、飯田たちと一緒にいなかった?」
そっと視線を彼ら──────緑谷・麗日・飯田に寄せる。
「昼は一緒にいたのですが、避難するときにはぐれてしまいました」
飯田が代表して答えた。
そして、やはりマスコミ騒動もあってか、教室内に不安が伝染していく。
──皆が騒いでいる隙に、誘拐でもされたのだろうか?
そんな、不安。
侵入したのがマスコミだけではなかったら?
終綴は無事なのか?
そんな懸念が、増していく中──────
ガラガラガラ、と騒がしく扉が開いた。
「ふう、ギリギリ間に合…………ってあ!?
ごめんなさいもう始まってる!!!」
慌ただしく、その原因が入って来た。
クラスメイトたちから視線を集めていることに気づき、終綴はへ!?と戸惑っている。
遅刻したから迷惑をかけたというのだけが原因ではないと悟ったようだ。
「遅刻だぞ」
相澤がギロリと睨む。
無事であることを確認し安心したのか、その色が浮かんで見える。
しかしそれに気付いていないようで、終綴はひぇぇ、なんて悲鳴を漏らしている。
蛇に睨まれた蛙のようだ、と緑谷はこっそり思った。
「気の緩みは、プロになってから生死に関わる。今から直しておけ」
相澤の注意に、はぁい、と先とは打って変わって気の抜けた口調で終綴は返している。
全く反省の色を見せないその態度を、相澤は苛立たしげに見ていたが、やがて諦めて目を閉じ、再びうつらうつらと舟をこぎはじめた。