第13章 日陰者
「死柄木さん」
銀髪の初老の男が、敵連合のアジトの扉を叩いた。
丸いサングラスを掛け、煙草を銜えている。
一見すると少しハードな外見なだけの優男だが、そうでないことを死柄木たちは知っていた。
「こっちじゃ、連日あんたらの話で持ちきりだぜ
何かでけぇ事が始まるんじゃねぇか…って」
男は、日陰者たちの暮らす社会では有名な大物ブローカーだった。
こっち、というのは日陰者たちが暮らす裏社会での事だろう。
男は大物と言われるに足りうる実力と観察眼を持ち、そのほどはかなり信頼されている。
だからこそアジトの場所も教えていたのだが、───────
「で、そいつらは」
死柄木は不快そうに右手を握った。
とても年上に対する態度とは思えないが、男にそれを咎める気は無いらしい。
男に続いて、見知らぬ存在が2人もアジトに入って来たからだ。
一瞬前まで見ていた、そばかすの多い子供の写真が粉々になる。
それに初老の男─────義爛は何も答えず、代わりに後ろから2人の若者が前に出た。
「生で見ると気色悪ィなァ」
継ぎ接ぎだらけの青年。
死柄木と年齢はそう変わらないであろう若い男だ。
身体中にある火傷のあとが特徴的で、見る者に痛々しい印象を抱かせる。
身に纏う衣服も古くヨレヨレで、首周りは更にボロボロだ。
その目には、死柄木に対する明らかな侮蔑が含まれている。
「うわぁ手の人、ステ様の仲間だよねぇ!?
ねぇ!?」
セーラーを着た女子高生。
スカートは短く、カーディガンから覗くストラップはジャラジャラと華美で、イマドキといった印象を受ける。
隣の青年とは対照的に表情はイキイキと明るい。
だがここはそんな女子高生が来るにはあまりに違和感、そう、「おかしい」。
しかし、そんな常識はここでは通用しない。
そして、彼女が死柄木の言葉に答えた。
「私も入れてよ、敵連合!」