第11章 忍び寄った影は消える
───やっばい遅刻する!!!!!
急げ、といつも通り石鹸の清潔な香りを漂わせながら終綴は走る。
その走り方は、どこかぎこちない。
チャイムの鳴る直前ではないのだが、何故か今日は急いでいた。
───ああもう、あいつの相手するといつもこうなる…!!
終綴の全身は、悲鳴を上げていた。
彼女の言う"あいつ"とやらの相手を1晩し。
その場を通りかかった恋人に助けられ─────"あいつ"が言うに、それは「邪魔」らしいのだが。
そこまでは良かったのだが、問題はそこからだった。
いや、そこからは大問題でしかなかった。
『またおまえは、あいつと居たのか』
「え、いや、あのそれは」
『俺にはあの子といるなと言うのに』
「ま、待…………んぅ」
唇を塞がれた。
そこから、2人の濃厚すぎる時間は明け方まで続いた。
彼から求められるのは嫌ではなく、寧ろ嬉しいけれど、持久戦に持ち込まれると困る。
普段淡白な分、ああなると彼は獣へと化す。
お陰で喉は痛いし、腰も痛い。
"あいつ"のせいでその他の部位も筋肉痛で、堪ったものではない。
───今日実技授業があったらどうしてくれてたのよ…!
運良く今日は実技のない曜日だからまだ良かったものの。
動きづらいことこの上なし、だ。
もう、としかしながら少し嬉しそうに呟き、終綴は歩を進めた。