第10章 灯る闇は光のように眩く
「えー改めて、体育祭お疲れ」
そんな労いの言葉と共に、朝のHRが始まった───が、すぐにそれは溜息へと変わる。
「相変わらず終綴は遅刻か」
「あああぁっギリ駄目だった…遅刻……ッ」
と同時に終綴は駆け込んできたが、やはり相澤はギロリと睨むだけ。
石鹸の匂いを纏う彼女は、そんな視線を軽く受け流して自席に着いた。
「………気を取り直して。
諸君にはこれから、コードネーム…ヒーロー名を考案してもらう。
それにはプロからのドラフト指名が関係してくるんだが…体育祭の結果を見てスカウトされた生徒もいれば、そうでない者もいる。言わばそれは、将来自身へのハードルにもなる」
で、その指名の結果がこれだ、と相澤は示した。
轟─────4123
爆豪─────3556
依田─────3043
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この3人にだいぶ偏ったな、と相澤は言った。
例年通りなら、もう少しバラけるらしい。
それほどまでに、彼ら3人が目立っていたということか。
────目立ちすぎたかもね。
終綴は結果を知り思わず唸りかけるが、それは抑えた。
「わー、私すごい!!
クラスのツートップと並べるだなんて!!」
代わりに歓声をあげる。
周囲からは苦笑が起こったが、笑顔は保ち続ける。
そして相澤は終綴の事を無視し始めた。
スルースキルが身についてきたらしい。
「で、これを踏まえて職場体験に行ってもらう訳だが…
おまえらは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようってこった」
「それでヒーロー名かぁ!」
「俄然楽しみになってきた!!」
クラスメイトたちは嬉しそうに声を上げる。
そして、ガラガラっと教室に入ってくる女性、1名。
何とも妖艶なこの教師は、18禁ヒーロー・ミッドナイトである。
「適当に名前付けたら地獄を見るよ!
この時の名が世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」
相澤はというと、ミッドナイトに査定を全任し、睡眠を貪るつもりらしい。
ゴソゴソと徐に寝袋を取り出し、その中に潜り込んだ。