第1章 ファーストアタック
──あたしには夢がある。料理人になる夢。
そして、あたしと付き合っていた彼にも夢があった。
お互いに夢を叶えたかった。だから、お互いに夢を優先した。
別れは言葉になくとも行動に出ていた。
だから、あたしはてっきり別れたんだって自分で自己解決していた。
彼もあたしを引き止めなかったし、あたしも彼を引き止めなかったから。
そりゃあ別れたと思うじゃん!
だから彼の連絡先も消して、新たに夢へ向かって突き進む人生を歩み始めたのだ。
あたしの腕が認められて、アローラ地方で店を構えて……やっと夢が現実になって有意義な気分だったのに!
「やっと見つけたと思ったらアローラに居たなんてね。こりゃびっくりだ」
「…なんでいるんだぁぁぁ!!」
思わず叫びましたとも。
なぜなら彼はこの地方にいる筈ないからだ。
彼はカロスの人間でカロスの現チャンピオン。
あたしは今、アローラにいます。
さて、これが何を意味するかと言いますと、、
「オレがアローラにいたら悪いの?」
「チャンピオンでしょーが!!」
「じゃあお隣さんこそ、なんでアローラにいるんだよ」
「あたしは夢がアローラで叶ったからアローラにいるんだよ!見ればわかるでしょ!!」
そう、ここは厨房。
彼はそんなのお構い無しにズカズカと入ってきてあたしの手を掴んだのだ。
「なるほど。じゃあオレがアローラに来た意味もわかるだろ」
「わかんないわ残念ながら」
「オレショック…フィアンセより夢に走るなんて。番号変えたなら言ってくれてもいいのにさ」
「言う必要ない」
「なんで?」
真顔で首を傾げている彼にあたしは平然とした態度で答えた。