第7章 爆弾魔
或る休日、私は国木田君と探偵社の事務所にいた。
これからに備えて机の上に有る書類を片付けていたのだ。
「国木田君。私、非番なんだけど」
「そんな事は判っている。不平不満は太宰に言え」
「その元凶の治ちゃんは何処行ったの?」
「小僧の処だろ。そろそろ俺達も出るぞ」
「はーい」
片付けを終えて私達は探偵社を出た。
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葉琉の非番を潰した元凶、太宰治は中島敦を連れて街を歩いていた。
どうやら敦はまだ行き先を把握していない様子だ。
「あの、太宰さん。今日は何処へ?」
「うん。君に仕事を斡旋しようと思ってね」
「本当ですか!?」
敦が期待の眼差しを向ける。太宰は何処か自信あり気だ。
「伝手の心当たりがあるから、先ずは探偵社に行こう。
任せ給えよ。我が名は太宰、社の信頼と民草の崇敬を一身に浴す男ー」
「此処に居ったかァ!!包帯無駄遣い装置!」
「おーい。治ちゃーん」
少し離れた所で、登場する度に怒っている国木田と、大きく手を振る少女葉琉の姿があった。
「この非常事態に何をとろとろ歩いて居るのだ!疾く来い!」
二人は太宰と敦の元へ歩み寄る。
「朝から元気だなぁ。あんまり怒鳴ると悪い体内物質が分泌されて、そのうち痔に罹るよ」
「何、本当か!?」
国木田は太宰の言葉を信じ、ショックを隠しきれないでいる。そんな二人のやり取りを呆れ顔で見守る葉琉。勿論、その後の予想も出来ている。
あっけらかんな表情で太宰は「嘘だけどね」と呟いた。
国木田は怒りに身を任せ、太宰に反撃という名の暴力を食らわせた。
「はぁ〜。国木田君、非常事態でしょ?こんな事してる時間ないよ?」
葉琉の声で国木田は正気を取り戻した。
「はっ!そうだった!探偵社に来い!人手が要る!」
「何で?」
「爆弾魔が、人質連れて探偵社に立て篭もった!」