第11章 今夜は朝まで離さない/前編
残暑が厳しいものの、9月に入ってから朝晩はかなり過ごしやすくなった。
赤とんぼが野山を飛び交い、
市場にはイチジクやキノコ類など旬の食材が並ぶ。
夏から秋へ、季節は移り変わろうとしていた。
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8月末から仕事が立て込み、莉菜さんとは辛うじて文のやり取りをするだけの日々が続いていた。
きっと寂しい想いをさせてるに違いない。
それなのに彼女からの文は俺の安否を気遣う内容ばかりで……
早く逢って抱きしめたい。
我儘をたくさん聞いてあげたい。
もどかしい気持ちを抱えながらも とにかく淡々と仕事をこなし、
やっと逢える目処がついたのは前回の祭りデートから ひと月が経った頃だった。