第1章 あったかい。
龍、正面から顔見たらりんごみたいなんだな。
「…へへっ」
私と同じことを龍も考えていたなんて、とちょっぴり嬉しくて口が緩む。
「ほら、甘酒…」
「あー、実はさー、私…甘酒苦手なんだよねー」
龍はそれを聞くと私の方を振り向きガクッとし、手に持っていた甘酒を一気飲みする。
「ったくー…」
空になった紙コップを近くにあったゴミ箱に投げ入れる。
あ…まだ顔赤い…。
私が龍をじっと見ていると、龍もそれに気づいたのか、またカァッと顔を赤くし、再び後ろを向く。
「………」
私は、きゅっと龍の大きな背中にゆっくりと抱きついた。
「は?!ちょ、栞?!///」
「私、まだ寒いし…」
顔なんて絶対こいつに見せらんない。
だって、今絶対に龍よりも真っ赤だし。
しばらく、なにも言わなかった龍がいきなりぐりんと正面を向く。
「な、なに、いきなり!」
そう言った次の瞬間、龍は私の背中に腕を回す。
今、抱きしめ合っている格好だ。
「りゅ、龍?コレかなり恥ずかしいんだけど…」
「うっせ!俺だって恥ずかしいわ!」
あっはは、なんじゃそりゃ!
心の中で笑ってたけど、龍なりには必死に私に応えてくれたんだ。
笑わないよ?
「これで、もう寒くねーだろ?」
「…うん。あったかい。」
また来年も再来年も大人になって、おじいちゃんおばあちゃんになっても一緒に行こうね。