第1章 あったかい。
この寒い中、普段いや、毎年行かなかったはず。
まあ、行かない人なんて私以外にいなかったんじゃないかな?
だって今日はその日。
1月1日―――…。
私は、ひと駅行った烏宮神社の階段を1段飛ばしで上へ駆け登る。
一応スカートを履いているのだが、大股を開いて走る。
「あ…!」
上まで登りきると、鳥居の柱に寄っかかった見知った人がいた。
「龍!」
大声で呼ぶと、その人は白い息を1つ漏らすとこっちへゆっくりと歩み寄ってくる。
「あけおめ!それとごっめん!お待たせ!」
「あけおめー。つかお前おっせぇし、さみぃよー」
ブルブルと肩を震わせる龍の目の前で両手を合わせる。
「ホントにごめんね!いつもなら余裕で着くと思ったんだけど…こんなカッコしたの初めてで動きづらくって…」
私は地面に目をやり、初めて履いたスカートの裾をぎゅっと握り締める。
「はぁー…」
龍がニット帽を深くかぶり直し、ため息をつく。
やっぱり、怒ってる…。呆れられた…?
もうやだ。
でもそりゃそうだよね…。30分以上も遅刻したんだし…。
来なきゃよかったかな。
私、好きな人と、ううん、彼氏と初詣なんて初めてだよ。
それに、スカートなんて物心ついてから履いたことなんて制服以外にないんだよ?
可愛く見せたくって、こんなカッコしてきたのは間違いだったのかな?