第3章 月の綺麗な日
彼の胸に頬が触れる、彼の心臓も高鳴っていた
『白石さんドキドキいってます。』
『そらそうや。』
『もう5秒経ちました?』
『いや、まだ3秒くらいのはずや。』
『ふふっ。』
『なんか余裕やな遥。』
『開き直ったのです。』
『なんやそれ、どうやるん?』
『白石さん、会話を延ばして時間を延長してますね。』
『…名探偵やな。』
『浪速の名探偵です。』
『標準語やんけ!よし、これで遥にやっとつっこんだわ。』
腕から離れると手を繋いで歩いた
夜空には月が大きく出ていてくっきりした満月だった
『月が綺麗やなぁ。』
『意味わかってて言っていますか?』
『ん?』
『夏目漱石はI love you.を月が綺麗ですねって訳したそうですよ。有名な話です。』
『そうなん?』
『はい。』
『ふーん。隣にいる誰かと見るから綺麗なんやろな。』
『……月が綺麗ですね。』
『遥、
『そういえば私のこと目で追ってたって、いつからなんですか?』
『ん?あー、確か5月くらいに転校してきたやろ?見たことない子おるなーって思てな。ほんで気になっててん。よく本読んでたしなに読んでるんかも気になったわ。』
『まぁ、スラッとしとって姿勢も良くてやから目ぇ引くんやで。あと、友達と乗っとった時に標準語つこてたから印象的やったかなぁ。』
『……本当に見てたんですね。』
『そらそうや、嘘ついてどないすんねん。もうなんちゅうか俺の目線辿ったら遥がおるんちゃうかっちゅうくらいに見てたで。』
『私も見てましたよ。わかんないように、ガラス越しとかで。』
『そうなん?気づかへんかった。』