第8章 三組織異能力戦争
中原中也は自分の執務室の横にある仮眠室で仮眠を取っていた。
「……也さん、中也さん!起きて下さい!」
聴こえるのは愛しい女の声。多分近くにいるのだろう。目を開ける事なく近くにいる人物の手を引き抱き寄せた。
「一寸、寝惚けないで下さい!」
「お楽しみな処申し訳ない、幹部殿」
葉月とは違う声でカッと目を見開いた。そして、勢いよく起き上がる。
「なっ、広津!居るなら居るって言え!」
「何も言う間も無く始められたんで」
チッと舌打ちし乍「何の用だ」と尋ねた。
「先程、組織のフロント企業が入った建物が消滅しました。それに伴い、首領より緊急招集がかかっています」
「…如何言うことだ」
「まだ何も判っていません。兎に角、中也さん、広津さん、私が呼ばれています」
広津に代わり葉月が答えた。中也は素早く身支度を整えて二人を連れ部屋を出た。
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「中也君、広津さん、葉月ちゃん、こんな遅くに済まないね」
椅子に腰掛け乍、首領は言った。
中也は帽子を胸に中て、敬礼を崩さずに「否」と答える。
「件の犯人は北米異能集団『組合』の仕業と判明した。奴等はまた直ぐにでも仕掛けてくるだろう。やられっぱなしは性に合わなくてね。中也君、広津さん。二人には構成員を使って組合の刺客を仕留めて貰いたい」
「「畏まりました」」
中也と広津は恭しく頭を下げる。
「葉月ちゃんは、私と一緒に付いて来て貰いたい。準備でき次第また此処に戻って欲しい。情報は葉月ちゃんに集中させ、捜索を行う」
「畏まりました」
次は葉月が頭を下げる。
「本当は芥川君にも頼む処だけど、まだ病み上がりでね。もう少し時間がかかりそうなのだよ」
「あの…首領」
「なんだね、葉月ちゃん」
「尾崎幹部は…」
紅葉は鏡花が消えてから塞ぎ込んでいた。
首領は困った表情で首を横に振った。
「…そうですか」
「此れが収まれば鏡花君奪還の許可を出す予定だ。其れ迄は本部の守りという事で紅葉君には此処に残って貰う」
「判りました」
「では三人共、宜しく頼むよ」
「「「畏まりました」」」