第1章 ▼騒がしい廊下で(尾浜勘右衛門)
私の恋人はモテる。
さわやかでしっかり者で、そしてイケメン。
モテない方がおかしいんだろうけど、彼女としては複雑です。
「尾浜く~ん!ちょうど良いところにいた!」
「あのねあのね、このお菓子すっごい美味しいの!食べてみて!」
「ん、いいの?ありがとう」
今だって女子たちに絶賛話しかけられているところだ。
私の恋人、尾浜勘右衛門。
上記の通り、彼は本当にモテる。
女子たちは彼を狙って話しかけ、普段出さないような甘い声を出し、ニコニコきゃぴきゃぴ擦り寄る。
あああ!そんなに近づくな、さり気なくボディタッチするな!
「も大変だなー」
「へ?」
突然声をかけられてそちらを振り向く。
そこには同じクラスで、私と勘ちゃんの友人の久々知兵助と竹谷八左ヱ門がいた。
「……大変ってなにが?」
「分かってんだろ~、勘右衛門だよ勘右衛門」
「相変わらずモテモテだなぁ、あの子たち隣のクラスの子でしょ?熱心だなぁ。も気が気じゃないだろ」
「ぐ……」
2人に図星を突かれて何も反論できない。
「嫉妬とかしねぇのか?」
「そりゃするに決まってんでしょ!?!?許されるもんなら今すぐ殴りかかってるレベルだわ!?!?」
「待って分かった落ち着いて、八左ヱ門に掴みかかるのやめよう!?」
「流石に女子と話すななんて無理な注文をするわけはないけどさ!?あんな好意剥き出しの女の子たちを何の抵抗もなく相手されてると、不安になるじゃん!?じゃん!?なんなん!?勘右衛門まじなんなん!?」
でもそれは私のエゴ。
勘ちゃんを束縛なんてできない。
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