第11章 予定外の幸福
はあい、こんちゃーす。
レトルトと、申しまーす。
僕は現在、悲しいことにある病院のベッドで寝ています。生まれて初めて、救急車で運ばれて入院まですることになってしまいました。
いや、そこまで心配されることでもないんですよ、はい。何か大きな事故に遭ったわけでも、重い病気を患ってしまったわけでもなく、原因は単なる自業自得。夕飯に消費期限切れと知りながら豆腐や鮭フレークを食べた結果、案の定、食あたりになってしまった──という、少し言うのも恥ずかしいマヌケな話です。
なんて。普段の実況風に状況説明してみたけど、何とも虚しくなっただけでした。
「はあ……プリンたべたい……」
病院の狭い個室で一夜を明かした俺は、お医者さんから今日一日絶食することを言い付けられて、朝からぐったりベッドに横たわって落ち込んでいた。
まあ、あんまり食欲を感じないから良いんだけど。それでも点滴ではなくて、何かしっかりと味の付いた物を口に入れたくなる不思議。駄目と言われたら余計に、ってやつかな。正直、牛丼とかめっちゃ食いたいのだが、どうせ今食べたって間違いなく吐き戻してしまうだろう。
自分の右腕に繋がれた点滴の管を見ていると、非常に己が情けなく悲しい気分になる。更に言えば、先程も言った通り、入院なんて生まれて初めての経験なので、いま現在めちゃくちゃ心細い。寂しい。家で置き去りになった飼い猫たちのことも心配だ。
あーあ、ほんまアホやな、俺。もう早い所さっさと退院して、こんなこと笑い話にしてしまいたい。
菜花ちゃん──俺の恋人が昨夜『猫ちゃんたちに餌やりをしてからお見舞い行くね』と携帯電話にメッセージをくれたことだけが、今の心の支えであった。