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【実況者】蟹の好きな花【rtrt夢】

第9章 恋する風邪っぴき


「あっ、こここっ、こんにちは! ぼ、ぼく、菜花ちゃんの友達の──って、菜花ちゃん!?」

「……はると、くん?」

 そこに居たのは紛れも無い、私の会いたかった春人くんだった。

「なん、で、」
「それはこっちの台詞! 何起きてきてんねん、風邪なら寝とかなあかんやろ!? 顔真っ赤やし、おれより鼻声なっとるやんかあ……オカン、やなかった、お母さんは?」
「わから、ん……どっか、出掛けてて、おらんの……。るとくんは、どうして?」
「お見舞い来たに決まっとるやん。先生から風邪引いて休みやって聞いて、心配やったから来たの。めっちゃ重症やん、やっぱり来てよかった。俺のオカンから林檎も貰ってきたんやけど、そっか、お母さん居らへんのかあ」
「お見舞い、なんて、だめだよ。風邪、うつっちゃう、から……帰って……」

 本当は嬉しくて嬉しくて仕方がなかったのに、私は彼の好意を最初拒否してしまった。風邪を移してしまいたくなかった気持ちは勿論、何故か、嫌だった。こんな弱った姿を、母のいない異常な家庭を、彼には見られたくなかったのかもしれない。
 それでも彼は、目を線にして眩しく笑って見せる。彼は昔から私の心の全てを見抜いているようで、気付いていても知らないふりをしてくれて、優しいひとだった。

「へーき、へーき! おれ、アホやから風邪なんてひかへんよ!」
「アホでも、風邪はひくよ……気付かへんだけで……」
「アホの部分も否定してくれよ」

 いつもの彼との掛け合いに、私は自然と笑っていた。彼の笑顔を見たおかげで、きっと安心してしまったのだろう。

「ありがと、う、はると、くん……」

 急にぐるりと世界が歪んで見えたかと思えば、視界がぼやけて、真っ暗に、なった。

「えッ、ちょっ、菜花ちゃん!? うそやろ、ねえ、起きて、起きてよ──菜花ちゃんッ!!」

 彼の悲痛な声と、心地良い手の冷たさだけは確かに感じて、でも、そこから先は何も覚えていない。
 
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