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【実況者】蟹の好きな花【rtrt夢】

第7章 やきもちの本音


 

 翌朝、私は鼻を擽る香ばしい匂いで目が覚めた。なんだろう、お肉がこんがり焼けたような良い匂いがする、美味しそう──って、あれ?
 昨夜いっしょにベッドで寝たはずの、彼の姿がない。あの後、お酒のせいかお薬のおかげか、すぐに寝落ちてしまって、私を抱き枕にして離してくれなかった彼が、居ない。ひとりきりのベッドに驚き、掛け布団を蹴って飛び起きた。

「ルトくん……?」

 寝室の扉の隙間から日の光が差し込んでいて、ぱたぱたぱた、控えめな足音がこちらに向かってくる。扉が大きく開かれて、いつも通り白いマスクを付けた彼がひょっこり顔を出した。

「あっ、菜花ちゃん起きてたんや。お、おはようっ」
「おはよう、私より早起きさんだったんやね、隣にルトくん居ないからびっくりしちゃいました。体調はどう? 二日酔いになってない?」
「う、うん、もう大丈夫やで! 飲んだのひとくちだけやったし、菜花ちゃんがお薬くれたし……。あのさっ、朝ごはん作ったんやけどさ、た、食べる?」
「えっ、ルトくんが?」

 私はますます驚いて目を丸くした。何だかばつの悪そうな表情でコクコクと頷く彼。私と目を合わせてはくれない。
 寝室におずおずと入ってきた彼は、数年前から着古したジャージの上から、見慣れない白いエプロンを付けている。胸元の赤いカニさんが可愛い。

「ホットケーキミックス残ってたから、それ混ぜて焼いただけやけど、ね。
 昨日、さ、菜花ちゃんにまたお酒で迷惑かけてもうたし、そのお詫びというか、何というか……俺、料理慣れてないから、ちょっと焦げたけど……。あっ、ベーコンと卵はええ感じに焼けたから! 褒めて褒めて!」

 我ながら会心の出来です! と一瞬目を輝かせて嬉しそうにガッツポーズしていたけれど、すぐハッと我に返ってしょんぼり反省モードに戻る彼。
 俯いたまま「ごめんね」と小さく零した彼に、甘く胸が締め付けられたことは言うまでもない。きゅんとした。
 
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