第6章 サイファーポールNo.9
ドカン!!!
大きな音を立てて天井に穴が開いた。パラパラと落ちる木屑と共に、人影がどさりと落ちる。
体格がかなり良い。雇われ用心棒だろうか。銃のようなもので撃たれた痕があり、げほっと血を吐いた。
アヤはすぐさま駆け寄り、声をかけた。
「大丈夫ですか!」
「ぐ・・・っ、大丈夫だから嬢ちゃん、早く地下に行け・・・。ヤバイのが来てるぞ・・・。」
アヤが拳を握りしめると、アヴェルの声が響く。
《アヤ、十分に気を付けて。危険が及びそうな場合は無理にでも君の体を借りるよ。》
「わかってる!」
アヤは甲板へ向かう階段を一気に駆け上がった。
甲板に出ると眩しい程の日差しが差し込んだ。とても良い天気だ。
賑やかだった船は不気味な程に静まり返っていた。応戦したらしき船員達がうめき声を上げてそこら中に倒れている。
「ひどい・・・。」
船員達は皆揃ってひどい怪我を負っていた。一刻も早い手当てが必要だ。
血で床がぬめり、むせ返るような血の匂いにアヤは思わず口元を押さえた。
辺りを見回すと、広い甲板の中央に立つ人影が見える。
事の元凶と思われる仮面の男にアヤは視線を向けた。
「・・・何だ。お前も向かって来るのか?」
ぼやいた男は片手で持ち上げていた巨漢を投げ捨てた。
ぱんぱん、と膝の汚れを払い、男はアヤに向き直る。
スーツを着ていても鍛えられ上げているのが良くわかる、シルクハットをかぶった長身の男性だった。
「あなたは・・・海賊?」
「応える義理は無いが・・・まァ海賊では無いな。」
男はそう告げると、あっという間にアヤの目の前まで距離を詰めた。
アヤには男の動きが見えていた。憶する様子も無く男を睨みつける。
「・・・・ほぉ。えらい上玉だな。しかも瞬き一つしないとは・・・ただ者じゃなさそうだ。」
アヤのフードをパサリと落とすと、表情を変えず男は呟いた。
「俺は逃げ出した奴隷共のガキ共を回収するためにこにいる。お上の命令でな。面倒だが生きて連れて帰らなきゃいけねェ。
だがそいつら以外は関係ない。邪魔をするなら・・・不可抗力だ。」