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THE WORST NURSERY TALE

第1章 【01】プロローグ


 シャワーを浴びて服を着替えると、ベッドに身を投げ出す。清潔なシーツ、ふかふかのマット。さすがスイートルームの寝具は及第点を与えてもいいレベルだな、とベルフェゴールは思った。ただし。


「暇潰しには、役立たねーけど」


 なんとも勝手な言い分である。
 先程十数名の人間を始末してきたベルフェゴールは、それでもまだ己のうちに燻る興奮を冷ましきれずにいた。袋の鼠を始末することはあまりに容易く、彼の好むスリルは到底得られない。断末魔の悲鳴と命乞いの台詞だけはこれでもかというほど聞けるのだけども。
 これから外へ行き、獲物を探してもいいのだが任務直後の単独行動はあまりいい顔をされないしな、とベルフェゴールは一人ごちた。組織というのは多かれ少なかれ面倒なものである。とはいえ、その面倒を差し引いても今の職場は彼にとって魅力的であるし気に入ってもいる。だからこそ、ため息ひとつで楽しいお遊びを諦められるのだ。


「あいつのとこにでも行く、か」


 むくりとベッドから起き上がり最上級の客室を出て、ベルフェゴールが向かったのは二階下の客室。同じような扉の並ぶ、その階は自分の客室があった階と違って随分と安っぽいつくりだなと思ったが、一般人から見ればまだ高級感に溢れていると感じるに違いない。
 ベルフェゴールは一つの客室の前で立ち止まり、躊躇う様子もなくドアノブを捻った。当然開かない。彼は不愉快そうに舌打ちをして、扉の横に備え付けられたインターホンを押した。
 数秒の静寂の後、ばたばたと音を立てて足音が近づいてくると扉は彼の前でひとりでに開いた。


「どしたの、ベルくん」

「それこっちの台詞。なんで鍵とか掛けてんの」

「いや、普通は掛けると思うんだけど…」

「ぶっ壊してやろうかと思った」

「あはは、今度はスペアキー貰っておくね」


 ずかずかと部屋に上がり込むベルフェゴールに文句の一つも言わず、氷雨は笑顔を向ける。扉には再びしっかりと鍵を掛けた。
 一足早く部屋の中に入ったベルフェゴールは、質素な室内をぐるりと見回し、デスクに置かれたノートパソコンを目に留めた。その画面には長々と文章が書き込まれているが、まだ途中のようだった。ふーん、と呟きながら、適当にファイル保存を選んだ後にパソコンの電源を落とす。

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