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THE WORST NURSERY TALE

第7章 【04-後編】零時の鐘が鳴るまで


「ま、それはそれとして、だ」


 にんまりと、ベルフェゴールの口元にさらに深く笑みが刻まれた。
 氷雨は反射的に身構える。彼女の直感は警鐘を鳴らしていた。事態は好転したわけでない、と。
 その予感に応えるように、青年は再びその手にナイフを携える。今度はしっかりと、氷雨自身に狙いを定めて。


「いつまで、そのガキと引っ付いてるつもりだ?性悪女」


 ーーさっきから離れようとしてるでしょうが!
 と、言ったところで、ベルフェゴールが納得しない事は彼女もよくわかっていたので口には出さなかった。相変わらず抱きついたままのフランへと目を向ける。


「フランくん、離してもらっていいかな?」

「やですー。ミーが殺されちゃいますー」

「大丈夫よ。そんな事にはならないから、ね?」

「いや、カエルは殺すけど」

「……ほらー、やっぱり殺されるじゃないですかー」


 フランが氷雨に擦り寄れば擦り寄るほど、ベルフェゴールの機嫌は急降下していく。彼も、氷雨も、完全にフランのオモチャにされていた。
 氷雨は、肩を落とすと首だけでベルフェゴールを振り返る。


「ベル、ナイフしまって」

「王子に命令する気かよ?」

「何でもいいから、しまって。立場が逆転してるのわかってるでしょ?」


 おそらく最初は、ベルフェゴールがなにか理由をつけてフランを追いかけ始めたのだろう。けれど、フランは氷雨というカードを見つけてしまった。感じの悪いセンパイを手玉に取ることができる、激レアカードを。
 ベルフェゴールは黙り込んだまま、それでもナイフはしまわなかった。彼女の言葉に従えば負けを認めたような気になる。それは王子である彼にとって我慢ならないことだった。


「簡単にカエルに捕まったお前が悪い」

「……巻き込まれたのは私のほうだよ」


 ピリ、とその場の空気が引き攣った。
 スクアーロとフランは直感的に確信する。ーーあ、これ、面倒な流れになるやつだ、と。


「おまえ何年殺し屋やってんの?フツーは捕まんないだろ」

「同じ組織の人間をいちいち避けないでしょ。ベルこそ、いい加減子供みたいな遊びはやめたら?」

「はあ…?誰がガキだって!?」

「こうやって他人を巻き込んで殺し合いを始めるのが大人なの!?」


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