第4章 【03】鳥籠のジュリエッタ
――コメータファミリーに代々伝わる指輪。ボンゴレリングよりも歴史は浅いと言われているが、コメータの人間にとってはボンゴレリングよりも価値があると言っても過言ではない。本来、それはボスが管理し、継承していくはずのものである。ファミリーを抜けた者が持つべきものではない。
「勘違いすんなよ」
リボーンは、いつになく真剣な様子でそう言った。氷雨は彼の瞳に視線を合わせる。なにか言わなければと思ったが、声が出なかった。
「今は一緒にいられなくても、お前は黎人の姉だ。コメータファミリーの人間だ。ボンゴレの一部だぞ」
「……でも、」
「世界が違う、か?そんなのは勘違いだ。お前が裏の人間だろうとなかろうと、オレ達が吸ってる空気は変わらねぇ。皆一緒だ」
「リボーンさん……」
「黎人のやつ、立派なボスになってもう一回迎えに行くって言ってたぞ。覚悟しておけよ」
「あの子ったら……ほんと、頑固なんだから」
姉第揃って似やがってな、と言ってリボーンは笑った。
氷雨は指輪を両手で握りしめると、拳を額に当てて俯く。選ぶことは捨てることと似ている気がした。しかし、また自分は勘違いをしていたらしい、と彼女は一人ごちた。
「次はファミリーの一員として、会えることを祈ります」
「ああ、オレも楽しみにしてるぞ」
「……黎人に伝えてくれますか?あなたが取りに来るまで、これは預かります、と」
「任せとけ」
「ありがとうございます」
氷雨は、晴れやかな顔で笑う。
「 さ よ う な ら 」
夕日を浴びて歩き出す背中はどんどん小さくなっていき、やがて曲がり角の向こうへ消えた。
その様子を、リボーンはずっと見つめていた。
ほら、もうおゆきジュリエッタ
きみが信じた あの空へ