第3章 (1) Forget-me-not
「!?」
想定外の出来事に思わず変な声が漏れてしまう。
驚きながら振り向くとそこには顔立ちの整った優しそうな男性が立っていた。
「あ、あ、あなたは…」
突然話しかけられたパニックで思わず似たような質問を返してしまう。
「僕はこの家に住んでいる者ですが…」
「アッ、ということはこの庭の持ち主さん!?すみません、勝手に入って!すみません、すみません!」
「ああ、いいんです!そんなに謝らないでください。草むしり、してくださったんですよね」
私を責めるわけでなく、かけられた言葉はむしろとても優しいものだった。
「はい…私、隣のアパートの者で…花が枯れかけてるのを見かけて、水やりをするようになってからこの庭のことが気になるようになってしまって」
「花が元気になっているなと思ったら、あなたがお世話をしてくれていたんですね。ありがとうございます。」
「いやいやそんな、お礼なんてっ」
今日に至っては完全に不法侵入なので褒められるどころか警察に突き出されてもおかしくないくらいなのに、目の前にいる彼は私にとても優しい笑顔を向けてくれた。
「僕、仕事柄あまりこの家に帰れなくて、庭の世話ができない日が続いていたので気になっていたんです。」
「凄く綺麗な庭なのにしばらく手入れがされていなかったのはそういうことだったんですね…」
褒められたことに照れながらも、彼の方に視線を向けると、青みのかかった瞳と目があう。
まさかこんな美形さんが庭の主だなんて……勝手にお婆さんとか想像してごめんなさい…。
「あ、挨拶が遅れましたね。僕は宮瀬豪と言います。お花、好きなんですか?」
「は、はい!私は泉透です!お花はその…詳しくはないのですが大好きです。でもこの庭の影響で前よりもっと興味が湧いたんです」
「わぁ、嬉しいなぁ。そんな風に言われたの初めてです」
そう言って、宮瀬さんはふにゃっと柔らかい笑みを浮かべた
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