第5章 (3)Reunion
「カナメ!良いところに来たな!」
「良いところ?何この状況?修羅場?」
カナメと呼ばれた美少年は目の前の惨状をドン引きしながら見ている。
血塗れの女を、ムキムキの男(しかも片手で猫を抱き抱えている)が脱がそうと押し問答しているところなんて、私が出くわしてもドン引きすると思う。
「しゅらば?こいつが汚れてんのに服脱がねぇから代わりに脱がせてやろうとしてんだよ」
「それ完全にセクハラだよね。それかお姉さんは宏弥くんの恋人なの?」
「は?いや違うけど」
桐嶋さんの返答に同調するように私はぶんぶんと首を縦に振った。
「はぁ…そんなことだろうと思った。とりあえずお姉さんは豪さんに頼んで、宏弥くんは早く新堂さんにその猫見てもらったら?怪我してるんでしょ、その子」
「お、確かにそうだな」
カナメくんの冷静な言葉で納得してくれたのか、桐嶋さんは猫を抱き抱えてこの場を立ち去ろうとする。
「じゃあな、透。後でな」
去り際にわしゃわしゃと頭を撫でられた。
あんな事のあとなのに、不覚にもきゅんとしてしまう。
し、心臓が持たない…。
「…ごめんねお姉さん、あの人馬鹿だから」
「あはは…カナメくん…でいいかな?ありがとうね、助けてくれて」
「別に…。そうそう着替えは他の人に頼むから、ちょっと待っ……あ」
カナメくんが何かを言いかけた時、ぱたぱたと廊下の奥から足音が聞こえてきた。
こちらに歩いてくるのが誰かカナメくんには分かったのか「今から来る人がいろいろやってくれるはずだから」と続けた。
「すみません、さっき桐嶋さんとすれ違ったのですが、ここに血塗れの女性がいると……あっ」
足音のする方から聞こえた優しい声。
それに私は聞き覚えがあった。
まさかと思い顔を向けると、そこにはあの日庭で出会ったあの宮瀬さんが立っていた。
「宮瀬さん!?」
「えっ、泉さん!?」
2人の驚愕した声が廊下に響き渡った。
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