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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第25章 白昼夢幻想曲5(烏養繋心)


「スランプだ……」
そんなやり取りした日から2週間もたった。
大事なテスト期間に入った。
そして、留学もかかっているらしいコンクールまでも日にちがない。
なのに、譜面が全く頭に入ってこない。
指が覚えない。
「あー………」
それはそうだ。
もう弾くことすらイヤになっている。
音楽に興味が湧かない。恐れていた事態がきただけだ。
(焦るな焦るな落ち着け……)
そう念じてはいるが、譜面を見ても頭で音が流れない。
(やばい……)
初めてのことに変な汗がじわじわ流れていく。
「そうだ、息抜きにテスト勉強しよ……」
と、机に座って5分。
内容が頭に入ってこない。
色々、考えがぐるぐると回っていく。
目が、すべっていて、文字が頭に入らない。


「スポーツも、スランプって、あるんですか?」
帰りにいつもの人のいない通りで、そんな話を振ってみる。
そんな気になれなくて、初めて、触れることを拒んでしまった。
「まあ、あるっちゃーあるな。
身体が動かないっつーか、モチベが上がらなくなってそのままやる気もなくなったり、あとは自己分析不足とかな。
目標と実力があってなかったりすると、なるやつもいるし……。
スランプ?なったのか?」
「はぁ…………全部当てはまる………」
「なんかあったか?」
言いずらかったが、解決方法が欲しくて、諦めて全部話した。
テレビという目標が一つ達成されてしまった。
それに伴う留学の話。
ついでにテスト、進路。
「お前は普通の人より繊細だからな」
「繊細……初めて言われました……」
「なかなかいねえよ。
さすが芸術家ってだけあるわ」
「……うーん」
「大体の奴は、今やってることが楽しければいいと思ってる。
それに対して、嫌いになりそうだからやりたくない、って思うのは少数派だ」
煙がふわっと車内に舞う。
私の今みたいに、目の前が白く霞んでいく。
「でも、留学は、やだな…。
その間に、結婚されちゃいそうで……」
「んな相手もいねえよ」
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