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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第25章 白昼夢幻想曲5(烏養繋心)


「、よくやったわね」
今日も母が適当に私を褒める。
少しだけ、テレビに出る仕事が来た。
それを母は自分のことのように喜ぶ。
私も、よくここまでこの身勝手な親についてきたなと感心した。
「この前の出演ね、偉い先生も観ていたのよ。
手紙がきたの」
「あっそ」
興味ない、と言わんばかりに相槌をし、普段着に着替える。
「それで、高校出たら、どこにしましょうか?
ウィーン?パリ?イタリアもいいのよぉ」
「は?」
「は?じゃないわよ、留学よ?」
「行かないから!」
「じゃあ、東京の音楽大学にする?」
「行かない」
「じゃあどうするのよ!?」
親の言いなりで留学なんて、真っ平御免だ。
ましてや、あの人と離れて生活なんて、考えられない。
(私がいない間に結婚しちゃうじゃん!!!)
「貴方にはもうこの道しかないのよ!!?
高校だって…私の言ったところと違うとこ勝手に受けて…!」
「家でも学校でも音楽なんて、イヤだったの!!」
半分嘘の、半分本心。
音楽自体は好きだ。
でも、それが嫌いになってしまいそうだった。
全部決められたルートで、私はまるで言いなりに走らされている電車のようで、それに耐えられなかった。
今も、そのジレンマは続いている。
演奏したいけど、したくない。
もし、指が動かなくなったら、私はいよいよいらない人形。
弾きたくなくなったら、そんな役立たずの人形なんて、誰も欲しくない。
それを思うと、大好きなことが怖くて仕方がない。
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