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繫がる物語

第8章 第七話


「なに…アレ…?!」
 王宮の頂上から見たのは巨大な光の渦、そしてそれに反するかのような、虚のような黒い化物だった。
(虚…?!いや、胸に穴がない…)

 エルアは化物を見て眉を顰めたが、その化物の上で浮遊している人を見るやすぐ思考をかなぐり捨てた。

「ジュダルっ?!」
 エルアが駆け寄ると、ジュダルは驚きに目を見開く。
「なっ…エルアっ?!なんでここにいんだ?!」
「アンタこそ何やってんの?!寝とかなきゃだめじゃない!」
「もう平気だ!銀行屋とアイツがやってくれた」
 そう言われて上を仰ぎ見ると、マスクとヴェールで顔を覆った男が立っていた。
 にしてもと、ジュダルは顔を暗くして、ボソッと呟いた。
「お前には俺が仕事してるトコ見られたくなかった…」
 エルアはその言葉に微かに目を見開いた。
「えっ……?」
 言葉の真理を計りかねていると、近くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「もしかして、あの時のお姉さんかい?」
 振り返ると、そこにはあの時の青髪の少年が立っていた。ただ、彼の額には何故か光を放つ文様があった。
「キミは…」
「僕はアラジン!マギさ!お姉さんは?」
「私はエルア。旅人よ」
 マギ、という言葉に少し驚きつつ、紹介を返す。
「僕も本当はそうなんだけど、ちょっと色々あってね…それで、聞くけど…お姉さんは彼らの仲間なのかい?」
 彼ら、とは銀行屋達の事だろうとエルアは察した。
 エルアは首を横に振り、告げる。
「いいや。私はアイツらの仲間じゃない。私はジュダルの味方。それだけよ」
 それを聞くと、アラジンは少し考えてから言った。
「それだったら、エルアお姉さんも見たほうがいいのかもしれないね。あまりいいものじゃないけど、見せてあげるよ」
「あ?なんだァ?」
 ジュダルが訝しむ中、アラジンの額の文様の光が一層強まり、ジュダルとエルアを覆った。









「ごめんよ、エルアお姉さん…」




 アラジンの謝罪の言葉と共にエルアに流れてきた映像は、ジュダルの過去の映像だった。




そしてはっきりと分かったことは、ジュダルはずっと利用されている者であった、ということだった。


エルアは只々、静かに涙を流し、その事実を受け入れた。
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