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繫がる物語

第1章 第一話



煌帝国 禁城





 ここには、帝国の皇族らが住んでいるという事で、普段は厳かな雰囲気に包まれているはずなのだが、ここ最近では、少々おかしなことになっていた。





「ぎゃあああああ!!!!」


 一人の少女が叫び声を上げながら、城内の廊下を全力疾走していた。
 煌では、女性は大体何かしら美しい装飾を施した着物を身に着けているのだが、その少女はなんの変哲もない漆黒の袴を纏い、腰には日本刀のようなデザインの短剣を括りつけていた。
 その格好からして、彼女が周りとは違う出であるのが分かった。



 分かったのは、いいのだが、なぜ彼女は今こうして廊下を突っ走っているのか。
 理由は、後ろで空中に浮かびながら彼女を追いかける男にあった。



 男は長い黒髪を後ろに三つ編みに結い、ルビーの様な紅い目をしていた。
 また、少女が露出の少ない袴を着ているのに対し、男は露出の高い服を着ていた。


「おい待てよエルア!」
「誰が待つかぁああ!!」
 エルア、と呼ばれた、袴を着た少女は男の言葉を突っぱね、なおも廊下を疾走する。

「神官の言うことが聞けねーのかテメェは!」
「神官らしい仕事してないくせに聞くか!てかそれ以前に私はこの国の人じゃないから神官も何も知るかッ!」
「ンだとゴラァ!!!」


 そんな言い合いをしながら、かれこれもう数十分は追い掛けっこをしていた。




 そんな二人を見ながら、中庭で剣の稽古をしていた兵士達は、笑いながら言う。
「ここんとこ楽しそうだな、神官殿」
「あんな顔、俺、初めて見ましたよ」
「バカ言え、俺もだ」

 神官、というのは黒髪の男のことで、名をジュダル、といった。細かい説明はよしとして、まぁ、国で一番偉い人物である。
 が、彼は自由奔放、気ままに生きる人物なため、業務を殆どしていない。というか、興味がないという事で、放置している。


「くっ、まだ追ってくる…!」
「まだ逃げんのかよあいつ…!どんだけ持久力あんだ体力バカか?!」
「誰がバカだバカジュダル!!」
「言ったなテメェ!」
 そう叫ぶや、ジュダルは懐から赤い宝石が先端に嵌めこまれた杖を出し、軽くひと振りした。
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